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八瀬八幡宮の鳥居(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八瀬八幡宮(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂(はっちょうざか)は、比叡山延暦寺西塔へ向う複数の山道です。約3.7kmほどの行程です。
京都バス17系統のバス停「ふるさと前」で降車し、八瀬天満宮(外部リンク)につきます。八瀬天満宮の鳥居をくぐり、しばらく参道を歩くと写真下の八瀬天満宮の社前の階段につきます。その前を左に曲がり、倉庫の脇が八町坂の入口になります。そこから東側に登ります。
ちなみに八町坂と同じように西塔へと向う山道に黒谷道がありますが、ここから北に200mほどの長谷出に入口があります。
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八瀬八幡宮脇の八町坂入口(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂入口(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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歩いていると左下(右岸)に川がみえます。これは丹住谷川で、高さ数10mに及ぶ深い谷になっていますが、進むにつれて徐々に谷が浅くなっていきます。
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八町坂(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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歩いていると左側(右岸)に天狗岩がみえます。この天狗岩には天狗にまつわる伝説があり、かつてこの岩の上には古木の林が繁っており、天狗が集団でここに住んでいましたが、その後林が火災のため灰燼と化してしまったため、天狗岩の名があるといいます(『山門名所旧跡記』巻第1、山門三塔名所名木名水名石旧跡記、西塔分、天狗岩)。
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天狗岩(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂から見た丹住谷川の渓流(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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坂口から1kmほど歩くと左の丹住谷川の谷は浅くなっていき、隣に渓流が流れるようになります。しばらくもしないうちに、正面に石地蔵がみえます。
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八町坂(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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この石地蔵は「首切地蔵」と通称されています。
比叡山では三塔十六谷というように、極めて多くの堂坊が建ち並び、エリア分けされていました。そのため道の分岐が多かったのですが、山道では分岐を見失いがちになります。
そのため比叡山の他の谷への道との境界・分岐点に設置されたのが石地蔵でした。地蔵菩薩は地獄の衆生を救って極楽浄土へ導くとされ、比叡山浄土教でも重要視されましたが、やがてその特質が火葬場・墓所など死と向き合う場所の境界に安置されることになり、やがて境界を示す地点として地蔵菩薩が安置されました。
ここもまた西塔青龍寺・西塔北谷・西塔南尾谷へと向かう道の分岐点となっています。
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首切地蔵(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂北谷道
首切地蔵から東側、丹住谷川の浅瀬を渡って東南東の急斜面を登ると、小さな山道の入口がみえます。これが八町坂北谷道で、西塔北谷へと向かうルートでした。
この入口の東北東側には西塔黒谷へ向かう八町坂黒谷道がありますが、こちらは後ほど紹介するとして、まずはこの八町坂北谷道を登ってみましょう。
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八町坂北谷道入口(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂北谷道(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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この八町坂北谷道は西塔北谷へと向かうルートですが、北谷の堂坊がすべて廃絶してから道は荒れ、現在は崖崩れによって完全に寸断されており、道を進むことはできません。
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寸断された八町坂北谷道(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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今回は八町坂北谷道の旧貌を知る上で、ほとんど崖に近い場所を500mほど登ってみました。
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寸断された八町坂北谷道(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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崖崩れ跡を登り切ると、林業のために整然と植えられた樹木群にたどり着きます。
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八町坂北谷道跡の森と植林との境目(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂北谷道跡の植林(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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しばらく行くと稜線上に到着します。ここには北東に向かう道があります。これは八町坂北谷道の跡で、もともと八町坂北谷道は東に直進後、南に直角に曲がり、また東に直角に曲がるとY字状に開いていたのですが、下の写真はY字状に開いた左側に当たるのです。
この道は植林などに現在でも使われているらしく、比較的整備されています。
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八町坂北谷道(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂北谷道(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂北谷道を歩くと、黒谷道に出ます。ここにも石地蔵があり、道の分岐点であることを示しています。
この付近は北谷と称され、比叡山十六谷の一つで、西塔に属していました。かつては瑠璃堂・如法経堂・東陽坊・地蔵堂(和労堂)・法然坊・正観院・行泉院・正教坊・乗実院・弁才天社・栄泉院・浄泉院(定泉坊)・金光院・正蔵院(起教坊)・金台院・瑞雲院(教光坊・瑞雲院)・行琳坊・大行事社・宝蔵・天満宮社が軒を連ね、比叡山焼き討ち後も江戸時代に多くの堂宇が再建されましたが、現在では瑠璃堂・正教坊・瑞雲院が現存し、行泉院・金台院・乗実院が北谷所属の里坊として山麓の坂本に残っているほかはすべて廃絶しました。
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黒谷道(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂黒谷道
八町坂北谷道を登った後は、八町坂黒谷道を降ってみました。
まずは黒谷青龍寺まで行き、そこから黒谷道を降りますが、300mほど降りると写真下のような分岐点にでます。ここでは排水官が指し示す南西方面へ向かいます。
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八町坂黒谷道(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂黒谷道(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂黒谷道は、道は細いながらもしっかりしていますが、倒木や蜘蛛の巣があったり、地面が滑るので、慎重に歩きます。
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八町坂黒谷道(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂黒谷道(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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約600mほど歩くと下に丹住谷川が見えます。首切地蔵に戻ってきました。
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八町坂黒谷道(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂松尾坂道
先ほどは首切地蔵から分岐した道を歩きましたが、次は分岐しない道を直進してみましょう。
八町坂松尾坂道は、首切地蔵から1,300mほど南進して、松尾坂に到着する道ですが、西塔南谷に接続するので、「八町坂南谷道」ともいい、また丹住谷川に沿って歩くので、「谷川道」とも称されています。
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八町坂松尾坂道(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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首切地蔵より300mほど進むと、風呂谷よりの渓流が南西方向から流れてくる地点に到着します。ここから左手の尾根ぞいに南東方向へ急坂を300mほど登る八町坂北尾谷道があるのですが、今回はそのまま南進します。
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八町坂松尾坂道(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)。風呂谷からの渓流が流れ込む。
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八町坂松尾坂道は、丹住谷川に沿って進むので、丹住谷川の微妙な曲がりや、増水具合、岩や植生によって、迂回を余儀なくされます。
もともと八町坂は西塔各谷の連絡ルートとして使われていたのですが、西塔各谷の山坊の多くが廃絶している現在、通る人もまばらで、とくに整備されているわけではありません。そのため非常に道が悪いのですが、八町坂松尾坂道に限っては、増水などの危険こそありますが、多少の迂回ルートを通っても丹住谷川を見失わない限りは、必ず松尾坂に到着することができます。
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八町坂松尾坂道(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)。左岸に迂回。
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八町坂松尾坂道(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)。下は丹住谷川。
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八町坂松尾坂道(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂松尾坂道(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂松尾坂道(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂松尾坂道(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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しばらく歩いていると並行して松尾坂に合流する林道が右側にみえてきます。
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八町坂松尾坂道(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂松尾坂道(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)
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八町坂松尾坂道を歩き切ると、松尾坂と林道の境界に出ます。ガードレールを越えて林道を道なりに行くと西塔に到着します。ガードレールの右側が松尾坂の西山の峠になります。
八町坂はいずれも谷の中や薮の中、薄暗い山道なので、壮大な山の景色とは無縁の地味なルートである上、荒廃しているため歩きにくい古道ですが、かつては西塔各坊の連絡ルートとして重要な道でした。
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八町坂松尾坂道と松尾坂の境(平成22年(2010)9月27日、管理人撮影)。中央が林道、左側が八町坂松尾坂道、右側が松尾坂。
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[参考文献]
・武覚超『比叡山諸堂史の研究』(法蔵館、2008年3月)
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