大宮渓道



東坂入口の石段(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)

 大宮渓道は比叡山の坂本側を大宮川に沿って位置する古道ですが、森林管理のため現在は林道として使われています。

 東坂と入口はほとんど変りはなく、東坂入口から100mのところで分岐しているのですが、東坂は主に東塔への直通ルートであるのに対して、大宮渓道は東塔・西塔・横川への連絡道として用いられていました。

 大宮渓道はその特質を生かして現在は林道となっており、そのため道自体は砂利道で歩きやすいのですが、現在は崖崩れのため、東坂入口から100mの分岐からの立ち入りが禁止されています。


東坂(左)と大宮渓道(右)の分岐(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)。大宮渓道の崖崩れのため、現在ここからのアクセスは禁止されている。

 大宮渓道は現在崖崩れのため正面からは立ち入りができません。崖崩れの場所を避けるため、東坂から直接大宮渓道に行くルートを歩いてみましょう。

 経由地は坂本の東坂入口から東坂へ、花摘堂跡付近から小道を通って大宮渓道へ、東塔北谷道との分岐点から西塔東谷道を縦走する4.3kmの行程です。

 東坂と大宮渓道の分岐点を東坂方面に上っていくと、すぐに垢坂と呼ばれる急な石段がみえます。今回はここを通過せず、石段の正面を迂回します。


東坂(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)



東坂(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)



東坂(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)

 東坂を歩くこと1.4kmほどで花摘堂跡との分岐点に到着します。

 この花摘堂跡の分岐から約20mほど降ったところの右側(北)に、大宮渓道に向かう小道の入口があります。


東坂の花摘堂との分岐(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)



東坂から大宮渓道へ向かう小道(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)



東坂から大宮渓道へ向かう小道(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)

 この小道は途中までは下り坂ですが、「火の用心」と書いてある看板のところで分岐します。ここを左側に向かいます。あとは平坦ですが、幅がせまい道です。


東坂から大宮渓道へ向かう小道の分岐(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)



東坂から大宮渓道へ向かう小道の分岐を進行方向へ見る(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)



東坂から大宮渓道へ向かう小道(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)

 この東坂から大宮渓道へ向かう小道は、非常によく整備されており、とても歩きやすいのですが、あまり人が通った形跡はありません。もとは近代の導水路のために開削された道らしく、石製の導水路の屋外排水桝が途中いくつもみられるのは、そのためのようです。また近代に開削されたため、岩を鑿岩して道を通したり、石垣を積んで道の補強をするなど、ほかの比叡山古道にはみられない特色があります。

 この道(つまり導水路)がいつ頃のもので、過剰な地下水を排出するためのものか、あるいは何処かに水を供給するためのものか、調査不足(というかまだ調査していない)ので詳細はわかりませんが、逐って報告したいと思います。


東坂から大宮渓道へ向かう小道にある導水路(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)



東坂から大宮渓道へ向かう小道(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)



東坂から大宮渓道へ向かう小道(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)



東坂から大宮渓道へ向かう小道(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)。石垣を積んで道を補強している。



東坂から大宮渓道へ向かう小道からみた琵琶湖(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)

 しばらく歩くと右側の下方に大宮渓道がみえます。しばらく歩くと棘のある植物が行く手を遮ります。それを越えてしばらく歩くと悲田谷道に接続します。


東坂から大宮渓道へ向かう小道(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)。下に大宮渓道がみえる。

 しばらく歩くと悲田谷道の入口にある導水路のアーチにたどり着きます。導水路のアーチを降りて下の階段を降るとすぐに大宮渓道に到着します。


悲田谷道の導水路のアーチ(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)

 悲田谷道を降りると大宮渓道に到着します。


大宮渓道(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)

 大宮渓道は東坂付近から大宮川に沿って、東塔・西塔・横川の連絡ルートとして使われたことは前述した通りですが、そのルートは多岐に渡っています。

 現在は崖崩れのため行くことはできませんが、坂口から衣掛岩に行き、しばらく行くと悲田谷道との分岐点に着きます。坂口から衣掛岩までは約1.7kmほどです。

 東塔へ行くルートは悲田谷道の他に東塔北谷道があり、西塔へは西塔東谷道が、横川へは横川道があります。最も長い横川道は、坂口から5.2kmあります。今回は西塔東谷道を行ってみましょう。


衣掛岩(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)



大宮渓道と大宮川(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)



大宮渓道(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)



大宮渓道(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)



大宮渓道(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)

 大宮渓道の林道を悲田谷道から1.3kmほど進むと、途中左側に抜ける道がみえます。ここを左側に行くと東塔北谷道・西塔東谷道に行きます。直進すると横川方面に出ます。


大宮渓道の分岐点(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)。正面をそのまま進むと横川方面へ、電柱から左に曲がると東塔北谷道・西塔東谷道に行く。



大宮渓道(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)



大宮渓道(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)

 しばらく行くとポンプ室がみえますが、ここはそのまま通過し、さらに進むと第二のポンプ室があります。ここで林道は終点になっています。


大宮渓道(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)



大宮渓道(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)

 ポンプ室の向こう側には石塔があり、ここが東塔北谷道への分岐点であることがわかります。東塔北谷道は現在崖崩れにより寸断されています。

 今回は西塔東谷道を通過して、西塔に抜けるルートをとります。


大宮渓道(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)



東塔北谷道入口(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)

 西塔東谷道へはまずポンプ室の背後にあるダム池の向こう側に行く必要があります。橋はないのですが、注意深くみると川が狭くなっている部分があるので、そこから濡れずに向こう岸へ渡ることができます。


西塔東谷道へのダム池(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)

 西塔東谷道はここから直線距離にして500m、高低差150mの急坂を登るのですが、実際に道を見分けることは困難なので、直接真上に向かって薮を漕いで進みます。


西塔東谷道付近からみたポンプ室(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)



西塔東谷道付近(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)



西塔東谷道付近(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)



西塔東谷道付近にて上から下をみる(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)

 急坂(崖?)をよじ登ること1時間ほどで森林管理用の小道がみえてきます。この道を進んでも目的地には到着しないので、さらに上に登っていきます。


西塔東谷道付近(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)。森林管理用の小道がみえる。

 登っていると上方に奥比叡ドライブウェイがみえます。今回はそのまま奥比叡ドライブウェイに登りましたが、実際の西塔東谷道は500m南西の本覚院に接続するので、実際の行程とは異なっています。


西塔東谷道付近(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)



西塔東谷道付近から奥比叡ドライブウェイに出る(平成22年(2010)10月18日、管理人撮影)

[参考文献]
・武覚超『比叡山諸堂史の研究』(法蔵館、2008年3月)  





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